ネット時代のコミュニケーションの新常識
背景
本講座を実施する背景には、ネット社会形成初期である現在の子どもたちが置かれている特殊なコミュニケーション環境が存在します。子どもたちは周囲の大人から社会的スキルを学びます。しかしながら、現在の子どもたちはネット環境がありながらそれに関する基礎的な学習を受けられず、経験学習に頼って行動しています。例えるなら、ひとりで遠くの知らない街に出かけ、良いことも悪いことも子ども自身で身をもって学習しているような状態です。
コミュニケーションは使用するメディアによってその内容が変容します。対面会話では表情や場の雰囲気、無言の時間などもノンバーバル・コミュニケーションとして役立ちますし、知人と他人の区別も分かりやすく、恐怖心や責任感などの抑止力も自然と発生します。ところがオンラインで行われるLINEやゲーム内のチャットやSNSなどのネットメディアでは、対面会話で役立っていた要素の多くが失われるため、ユーザーの社会的スキルや過去の経験などと紐づけて予測する力や、自分を俯瞰して観察するメタ認知能力などが必要になります。デジタルなコミュニケーションはアナログに比べて感情伝達や場の雰囲気などの「コミュニケーションの質」が低下しやすいため、それを補う想像力や論理思考などユーザーの社会的スキルが必要になるのです。
また、コミュニケーションの目的には、親密さを求めるクローズドな関係から特定の手段のために協力するオープンな関係まで幅広くあります。このうちネットコミュニケーションはオープンな関係づくりに適している一方、知らない人にも心を打ち明けられる認知バイアスが働きやすいことから、親密な関係づくりにはリスクがあります。
思春期の子どもたちは、社会的スキルの学習不足により危険の予測や情報の読み解き能力に限界があります。そのため体感できることが多い対面会話が最も優しいコミュニケーション手段と考えられます。コミュニケーションの目的も親密な関係づくりに強い関心がある一方、大人と違って社会活動を行う機会が少ないためオープンな関係づくりの必要性が乏しい状況にあります。こうした子どもたちの立場から考えると、ネットメディアは子どもたちの理解の限界を超えやすく、人間社会を熟知した大人向けのメディアであると言えます。
これを踏まえたうえで、子どもたちの社会的スキルを向上させ、ネットメディアの構造やコミュニケーションの質を理解し、日々のネット活用を通じて学習内容を定着させる持続的な取り組みが必要になります。
講座概要
本講座では、コミュニケーションを科学的・論理的に理解しながら自分事として問題を捉え生活に役立てることを目的に、以下の構成で進めます。
1.インターネットの理解
インターネットを仮想のコミュニケーション空間と捉えることで、日常のコミュニケーションと異なる特殊なものであることを意識させます。これによって、ネット利用の姿を俯瞰して捉える素地をつくります。
2.デジタルコミュニケーションの特徴
メディアリテラシーの手法を用いて、文字情報の読み解き方やデジタルとアナログのコミュニケーションの違いを科学的に理解します。これによって、将来発生するトラブルの原因を整理し、自分の課題に気づき改善していく力を高めます。
3.間違える仕組みの理解
当たり前のことができなくなる脳の仕組みを説明し、人は本来間違いを犯しやすい存在であることを理解します。自分は大丈夫と思わず、自分では気付きにくい間違いのきっかけがあることを知り、警戒心や他者に相談する姿勢など、より安全にネットを利用する意識を高めます。
4.ケーススタディ
ここまで学習したことを踏まえ、事例を用いて事件やトラブルの原因を論理的に考える力を養います。
5.SNSの役割
SNSは何のために使われるのか、どこにリスクがあるのか、対人関係におけるSNSの価値と課題を整理して、健全なネット利用のあり方を考えます。
期待する効果
本講座を通じて学習者には次のことを期待します。
1. 身近な問題に関心を持ち問題の仕組みを考える機会を増やす
2. 自分の行為を振り返り失敗から学ぶ
3. より善いネット利用のあり方を考え成功体験から学ぶ姿勢を養う
