メディアと関わる三つの視点

「使い方」「向き合い方」「付き合い方」で考える

 スマートフォンやインターネットの教育では、「正しい使い方」を教えることがよく重視されます。危険なサイトに近づかないこと、個人情報をむやみに公開しないこと、SNSで相手を傷つける投稿をしないことなど、基本的なルールを知ることはとても大切です。学校でも家庭でも、まずはこうした行動の注意点を伝えるところから始まることが多いでしょう。
 しかし、実際に子どもたちの様子を見ていると、メディアとの関係は単純な「使い方」だけでは説明できないことが少なくありません。たとえば、動画を見続けてしまう、SNSの反応が気になって落ち着かない、誰かの投稿を見て気持ちが大きく揺れる、といった体験は多くの人にあります。そこには、メディアの操作だけではなく、感情や思考が影響を受けている状態が見えてきます。
 スマートフォンは道具であると同時に、人と人の関係をつなぐメディアでもあります。そのため、メディア教育では行動だけでなく、影響や生活との関係も含めて考える必要があります。そこでCODE理論では、メディアとの関係を理解するために三つの視点を意識します。それが「使い方」「向き合い方」「付き合い方」です。

使い方 ― 行動を見る視点

 「使い方」とは、スマートフォンやインターネットをどのように操作し、どのような行動をしたかを見る視点です。どんなアプリを使ったのか、どんな投稿をしたのか、どれくらいの時間利用したのかなど、外から見える行動や結果がここに含まれます。
 日本語の「使い方」という言葉は、操作方法だけでなく、目的や結果まで含めて語られることがあります。例えば「スマホの使い方が悪い」と言うとき、それは単に操作の問題ではなく、長時間利用したことや、不適切な投稿をしたことなどを含んでいることが多いでしょう。つまり「使い方」という言葉は、メディアを使った結果として起きた出来事を整理する視点でもあります。
 この視点は、ルールやマナーを学ぶうえでとても重要です。情報モラル教育やネットリスク教育の多くは、この領域を中心に行われています。トラブルを防ぐためには、まずどのような行動が問題になるのかを理解する必要があるからです。子どもにとっても、「何をしてはいけないのか」「どんな使い方が望ましいのか」を具体的に知ることは大切な学びになります。
 ただし、この視点だけでメディアの問題を理解しようとすると、「なぜその行動が起きたのか」という部分が見えにくくなることがあります。行動の結果は見えても、その背景にある感情や思考までは十分に説明できないからです。 

向き合い方 ― 影響を見る視点

 そこで重要になるのが、「向き合い方」という視点です。向き合い方とは、スマートフォンを使っているとき、自分の心や考えにどのような変化が起きているのかを意識することです。
 スマートフォンは単なる道具ではなく、人の感情や思考に影響を与えるメディアです。SNSでは他人の反応が返ってきますし、動画は次々と再生され、通知は注意を引きます。こうした仕組みは、便利さや楽しさを生み出す一方で、人の意識を引きつけたり、行動を続けさせたりする働きも持っています。
 そのため、スマートフォンを使っているときには、さまざまな感情が動きます。誰かの投稿を見てうれしくなったり、不安になったり、比べて落ち込んだりすることもあります。また、つい長時間見てしまったり、強い言葉に反応してしまったりすることもあるでしょう。
 こうした体験は、単なる操作の問題ではなく、メディアの影響を受けている状態とも言えます。向き合い方とは、その影響に気づき、自分の内面で何が起きているのかを考える視点です。
 特に子どもにとっては、この視点が十分に育っていないことがあります。ルールとしての使い方は知っていても、自分がなぜその行動をしてしまったのかを言葉にすることは簡単ではありません。だからこそ、メディアが心に与える影響を理解することは、メディア教育の重要な部分になります。

付き合い方 ― 生活との関係を見る視点

 三つ目の視点は「付き合い方」です。これは、スマートフォンを生活の中でどのように位置づけるかを考える視点です。
 スマートフォンは、連絡手段であり、娯楽であり、情報源でもあります。便利であるほど、生活の中で使う時間や場面も増えていきます。そのため、どのように使うかだけでなく、どこまで使うのか、いつ使うのか、他の活動とどうバランスを取るのかを考える必要があります。
 例えば、勉強や睡眠とのバランス、家族や友人との時間との関係、運動や趣味との組み合わせなど、スマートフォンの位置づけは生活全体の中で決まります。このように、メディアとの距離感を考えることが「付き合い方」です。
 付き合い方の視点では、スマートフォンは単なる娯楽や連絡手段ではなく、生活環境の一部として考えられます。どのような距離で関わるのか、どんな場面で活かすのかを考えることによって、メディアを生活の中でよりよく活用することができるようになります。
 このように、スマートフォンとの関係は「使い方」「向き合い方」「付き合い方」という三つの視点から考えることができます。行動を見る視点、影響を見る視点、生活との関係を見る視点です。メディア教育では、この三つの視点を行き来しながら考えることによって、スマートフォンをより深く理解することができるようになります。